夏休み読書感想文 本の選び方

 暑い日が続きますね。教室でもクーラーを付けるようになりましたが、同じ温度でも人によって暑かったり寒かったり。

 風邪を引かせてはいけないので「寒い」という子にあわせて温度を設定していますが、中には我慢して何も言わない子もいます。我慢しないで気軽に言って下さいね。

 

 さて、今回はもうすぐやってくる夏休み、その楽しいはずの1ヶ月を邪魔する強敵、読書感想文についてです。

 毎年やってくる面倒な宿題。

 子どもたちは書けなくて苦しむし、お母さんは「ほとんど私が書いている」と悩んでおられるしで、本当に困った課題です。

 実のところ読書感想文を書くというのは、非常に高度な知的作業です。

 どこがどう高度なのかは長くなるので語りませんが、4年生くらいまでに原稿用紙1,2枚を書けるよう国語の授業できちんと書き方を教え、その上で高学年になってから夏休みの課題として4枚くらいに挑戦させるのが適切なのではないかと私は思っています。

 そんな読書感想文ですが、せっかく宿題として書く以上は子どもたちの学びの機会となるよう、これから何回かに分けてお話ししたいと思います。

 

 

「本の選び方」

 

 まず、本選びで最も大事なことは、子どもが自分で本を選ぶ、ということです。

 

 夏休みの課題図書としていろいろな本が紹介されていますが、無理にそこから選ぶ必要はありません。

 また、親から「これがおもしろいからこれで書いたら?」と本を渡すのもなるべく避けて下さい。

 図書館や本屋で、子どもが自分で探し、選ぶべきです。

 何を選ぶかということから、すでに学びは始まっています。

 自分で探せば、「お、こんな本があるのか」という発見につながります。それは、子どもにとって世界が広がるという経験です。

 また本を探しているうちに、自分が何に興味を持っているのかが見えてきます。自分自身を知る機会ともなるのです。

 そして探した中から読む本を「選ぶ」という行為は、自分の意思で決めるという訓練でもあります。ささやかな訓練ですが、この小さな自己決定が積み重なることで、子どもはだんだん自立できるように成長していきます。

 

 不慣れなうちは、自分で選んでも「つまらなかった」「感想がない」となるかもしれませんが、それは失敗という経験であり、次に自分で選ぶための材料となります。

 良い本を選べるようになるというのも、失敗から学んで出来るようになることですよ。

 

 親からしてみれば、こんな本を読んでほしいという願望があるかもしれませんが、そこはぐっと我慢して、紹介程度にとどめて下さい。

 本を選ぶことも、子どもにとっては大事な成長の機会です。

 

 

 

 さてその上で、読書感想文用にどんな本を選ぶと良いか、二つのアドバイスです。

 

 

1.「分かりやすい本」「簡単な本」より、ちょっと背伸びするくらいの難しめの本を選ぼう。

 

 読書感想文を手っ取り早く終わらせたい子どもはついつい、分かりやすく簡単な本を選んでしまいがちです。

 ですが、そういう本はかえって感想を書きにくく、苦労することになります。

 その本が簡単で分かりやすいのは、その子にとってもう分かっていることが多いからです。それはつまり、新たな発見や感動が生じにくいことを意味します。

 

 少し難しめの本を読むと、そこにはいくつもの「分からない」が出てきます。

 その疑問について、考えながら感想を書いてみると、書いているうちに発見が生まれ、筆が乗りますよ。

 

 

2.好奇心をくすぐられる本を選ぼう。

 

 もし、今何か興味があるものがあったら、それに関係する本を選ぶと、多少難しくても楽しく読めると思います。

 例えば動物が好きなら「シートン動物記」のようなエッセイや、動物が出てくる小説をさがしてみて下さい。

 

 自分が何に好奇心をかき立てられるのかまだ分かっていなくても、図書館で自分で本を探せば、「これ、なんだかちょっと気になる」という本に出会うはずです。

 なんとなく気になるな、ていどの好奇心で充分です。

 それで良い本に出会えればラッキーだし、「なんか違う」と思ったら閉じて他の本を探せばいいのです。

 

 

 

 読書感想文はとてもめんどくさい宿題です。

 その面倒くささからついつい適当に本を選んでしまいがちですが、実は最初の本選びと、そして本を読むことにこそ時間をかけ、力を入れるとあとが楽になります。

 夏休みになる前に、今からちょくちょく図書館や本屋に通って、ぜひいろいろな本に触れてみて下さい。

2017年06月10日