[作文紹介]七夕をテーマにした物語

 こちらに載せるのが遅くなってしまいましたが、7月の上旬に「七夕」をテーマにお話を考えてもらいました。
 織り姫と彦星の伝説をもとにして「えんぴつと消しゴム」でお話を創る子など、おもしろい作品がいくつかあったのですが、その中から小学5年生の作品を紹介します。
 文章の所々に、七夕に縁のある言葉が使われていますよ。主人公の心を伝えるための風景描写もすばらしいです。

 

  あの日の再会

 私の家のとなりに住んでいるけんちゃんが引っこすことになった。パパの仕事の都合で遠くはなれたいなか町へ行くみたい。引っこす前日、私とけんちゃんは、家の近くにある川へ遊びにいった。その川には、橋がかかっている。私はけんちゃんに言った。
「ねえ、来年の夏休みには、遊びにきてね。」
「うん、わかった。」
 次の日、けんちゃんが引っこした。白い軽トラックの後ろに荷物をつんで、そのまま何も言わずに車に乗っていった。そしてその車は、エンジンをかけて、そのまま走り続けて、やがて見えなくなった。
 その夜、ママが、
「明日七夕だから短冊かきな。」
といってきた。だから私は、短冊に、
『来年の夏休みに、けんちゃんと会いたい』
と書いた。そしてその短冊を私の背より少し大きいささの葉につけた。
(けんちゃんにあえるといいな。)
 夏休み明けの学校。
「行ってきまーす。」
 私は元気に家をとび出した。だけど、いつもいっしょに学校に行っていたけんちゃんがいない通学路は、少しシーンとしていた。いつもは、けんちゃんと私の笑い声が町中にひびいているのに……。町の道路を走る軽トラックが、全部けんちゃんに見えた。
 それから一年がすぎた。空には、入道雲がおもたそうにうかんでいる。今日は、夏休みで、夜に七夕祭りがある。私は、祭りに行く前に、家の近くにかかっている橋に行って、川をじっと見つめていた。
(けんちゃんくるかな?)
 すると後ろから、車のドアを閉める音が聞こえた。ふりかえってみると、そこには、けんちゃんが立っていた。かみがたも、まゆ毛の形も、立ち方も、全くかわっていない。
「けんちゃーん」
 私はけんちゃんにだきついた。においも、通常通りのけんちゃん。思わず涙が出てきた。私が落ちつくと、けんちゃんといっしょに七夕祭りに行った。すごく楽しかった。
(おりひめとひこぼしも再会できてるかな。)
 私は心の中で、思った。夜空には、美しい夏の大三角が光り輝いていた。
 来年もけんちゃんに会えるといいな。

2023年07月31日